畳加工技術
畳は日本で発祥し発展してきた伝統文化です。現在のような畳の構造になったのは平安時代ごろからと言われています。畳は重みがかかっても耐えられるように、内部にボードなどを重ねた畳床(たたみどこ)があり、表面を美しいゴザ(和紙やイグサ、樹脂製があります)で包みます。表面を畳表(たたみおもて)といい、日本の象徴的な畳の模様を見ることができます。畳の縁は畳床と畳表をつないで強度を高めるとともに、美しい装飾として欠かせない畳縁(たたみべり)を巻きます。多くは職人の手作業で製造され、使う場所に合わせて厚みや装飾を決定しています。
畳は、衝撃の吸収性が高く、日本で生まれた柔道が畳の上で行われているように、強く打ちつけられても怪我を防いでくれます。また、温かみがあり、素手や素足で触れた時の感触が安らぎを覚えます。
畳床に使用する畳ボード。畳ボードは、木材チップを原料とする木質繊維を板状にした材料でつくられています。
この畳ボードを畳床に使用することで、畳としての強度を高めた上に、断熱性、軽量性や湿気の吸放湿性の性能を兼ね備えることができます。
楽庭の畳には、軽量化を図るために軽量なスタイロフォームを組み合わせて製作しています。
畳ボードを紙製の防湿シートで包みます。包むことで湿気を調整し、畳の寿命を延ばします。大切な畳を長く使うための工夫です。
シートは特殊な機械で畳床に貼り付けられます。特殊な機械には沢山の針がつくていて、畳床とシートを糸で縫い合わせます。
楽庭では、底面に防水シートを貼り付けています。それは、楽庭を様々な場所に置けるように考慮したもので、下から水分を吸い上げない構造としています。
畳表のゴザを畳に縫い付けます。ゴザはイグサや和紙、樹脂製などの種類がありますが、楽庭では和紙で作られたゴザを使用します。和紙とは日本古来の原料を用いて手漉きでつくられる紙で、日本の生活文化を代表する素材です。現在は機械漉き和紙を使用しています。和紙は繊維が長く絡み合っているため、薄くて丈夫であり、寿命が長い特徴があります。また、柔らかく温かみのある質感が、畳表として最適です。
ゴザは特別な畳用の包丁で端部をカットしてます。包丁は長年使っている間にちびっていくため、小さくなっていきます。小さくなってちびった包丁は、また違う使い道として重宝します。畳職人はハサミやカッターではなく、包丁であらゆる切断を行っていきます。
包丁は、畳作りにとって、欠かせない相棒です。
畳ボードに畳シートと畳表のゴザを縫い付けた状態です。これで、畳の姿がほぼ出来上がりです。
畳表の約1㎝の織り目のことを畳目(たたみめ)と呼びます。お茶室では、道具や茶碗を置く位置を畳目を目安にしています。
畳目には、引目と目積の2種類があります。引目よりも目積は織り目の幅が狭くなります。楽庭では、小面積の畳をより美しく仕上げるため、目積の畳目を採用しています。
畳の仕上げとして畳縁を縫い付けます。畳縁とは、畳のへりに付けられている布のことで、畳表の角を補強する役割、畳の間にできる隙間をしめる役割があります。 畳縁にはさまざまな種類があるため、使用場所に合わせた模様を選択します。楽庭では、 茶室で使われることの多い無地の黒を採用しています。
畳縁を踏むのは、日本の伝統的なマナーとして失礼な行為とされています。畳の縁を踏むと、畳の縁が傷んだり畳の表面がずれたりする可能性があります。大切な畳が傷むような行為をすることを日本ではマナー違反としているのです。
また、畳の縁は境界線を示す役割もあります。例えば、茶室では、畳の縁に沿って座ることが礼儀とされています。
畳縁を仮止めして、縫い付けると畳の完成です。畳はこのような工程を経て、畳職人が丁寧に仕上げています。
畳は、畳縁に力を加えたり、角をぶつけたりすると、傷んでしまいます。使用する際には、畳の扱いに注意を払う必要があります。また、保管時に多湿状態であると、畳表の和紙にカビが生える可能性があります。保管時は通気性の良い場所に置き、乾燥剤などにより調湿する必要があります。
適切な使用方法と保管を行えば、畳は非常に長く使用することができます。