景石へのこだわり
日本庭園の景石は山や滝などに見立てて設置されます。楽庭に使用する景石は、石肌の質感や色艶、そして表からみた形を十分に吟味しています。庭園技術おいて、石は落ち着いて見えるように設置します。楽庭では、景石それぞれの特長が最大限発揮できるように底面がカットしてあります。そのため、誰でも置くだけで立派な完全な状態に景石をそびえ立たせることができます。また、景石が2つ以上ある場合は、景石同士の釣り合いが重要です。統一した色合いや、石質により、庭園全体が一体化する必要があります。景石は一つでの美しさよりも、全体でも調和が最も重要視されます。それゆえ、日本庭園は庭園全体でストーリーを奏でることができるのです。
楽庭の川石は、島根県出雲地方を流れる一級河川「斐伊川」の石を使用しています。斐伊川は、中国山地の船通山に源を発し、北に流れ宍道湖に流入する、流域面積約2,550平方km、長さ153kmの一級河川です。上流部は日本の神話で知られているスサノオノミコトの八岐大蛇退治の舞台として有名であり、古事記では「肥河(ひのかわ)」、出雲国風土記には「出雲大川」と記載されています。当時は出雲平野を西に流れていましたが、江戸時代に現在のように東にながれるように川筋が変わりました。上流で行なわれた「たたら製鉄」で必要な砂鉄を採取するための「鉄穴(かんな)流し」の影響で、川底が周囲の平野よりも高い「天井川」となっています。
神話の伝説が残る斐伊川の川石には、神々しい美しさと趣を兼ね備えた存在感が宿っています。