素材へのこだわり

竹材へのこだわり

「楽庭」に使用する竹材は、青竹を火で焙り、油を染み出させたあと、直射日光下で乾燥させて白くて光沢がある美しい白竹です。白竹は天然の竹材であるため、そのままではどうしてもカミキリムシ類やキクイムシ類などの虫害にあいます。そこで、防虫効果の高い薬剤を加圧して竹材内部まで浸透させる防虫加工を施しています。加圧は真空加圧式注入機を使用し、竹材の繊維の中に含まれている空気を抜き取ることで、薬剤を内部の隅々まで浸透させることができます。防虫薬剤は、防虫効果が高く、無色透明で無臭、安全性に優れた竹専用薬剤を使用しています。また、竹材はカビが発生しやすい材料でもあります。そこで、抗菌・防カビ剤への24時間浸水処理も行っています。

 特に、竹材の切断面や内側面は虫害やカビの発生が起きやすい部分となります。そこで、この部分には、常温・常圧でも竹材に浸透しやすく、竹材組織内の水分、セルローズと反応して硬化するポリウレタン系のプレポリマーが主成分の無色透明液体を塗布して補強しています。この液体は、人体に有害なトルエン、キシレン等及びホルムアルデヒドを含有しておりません。人体に対して無害で安全な塗料です。

木柱へのこだわり

木材は、天然杉材を使用し、割れを防止するために芯抜き材としています。木材は虫害や腐朽菌の被害にあいやすい素材です。そこで、ACQ薬剤を加圧注入し、表面のみならず中心部まで保護しています。ACQとは、銅と第4アンモニウム塩を配合した環境に優しい防腐剤で、ヒ素やクロム化合物を含まない、安全な防腐・防虫剤です。

また、木柱の表面の保護と風合いのある色を出すために、木材保護含浸塗料を塗布しています。木材保護含浸塗料は、紫外線を効果的に反射・吸収することで木材を守ります。また、水をはじき、木材の内部に染み込むのを防ぎます。保護力の高い塗料ですが、塗膜をつくらないため、木材が本来持っている優れた調湿性が損なわれず、通気性が保たれます。このように耐候性、撥水・防腐・防カビ性に優れており、木の香りをそのまま生かせる塗料です。

灯ろうへのこだわり

楽庭の石灯ろうは、島根県出雲地方で産出される来待石を加工しており、出雲とうろうと呼ばれています。来待石は風合いや色合いに趣があり、灯ろうの風情には最適な石質です。来待石は、宍道湖の南岸(松江市宍道町の来待地区周辺)に分布する大森来待層で採れる1,400万年前(新第三紀中新世中期)の火山堆積物が海底に堆積して形成された凝灰質砂岩です。大森来待層では、サメの歯、貝類、樹木など、堆積当時の生物・植物の化石が産出します。1,300万年前に絶滅した哺乳動物 パレオパラドキシアの化石も発見されています。大森―来待層で採れる来待石は、豊富な埋蔵量を有しています。石質が均一であるため、良質な石材として利用されてきました。
古くは、5世紀ごろ(古墳時代中期)には古墳の石室や石棺に使用されています。

中世には、宝篋印塔・五輪塔などの石塔(供養塔・墓石)や、石段・石垣などの建材としても使用されるようになりました。江戸時代になると、来待石は御止石と呼ばれるようになり、松江藩の許可がなければ藩外へ販売することができない石材であったと伝えられています。松江城にも、石段や水路枠などの建材として来待石が使用されています。その他、石仏などの彫像、庭園石材、生活用具などにも広く使用されるようになっていきました。

江戸時代後期には、日本海航路や陸路によって建材や石灯ろう、狛犬(こまいぬ、出雲唐獅子)などを始めとする様々な来待石製品が、全国各地へと盛んに運ばれていきました。

 来待石は現在でも、国指定の伝統的工芸品である出雲石灯ろうや、石粉を利用した石州瓦・石見焼の釉薬(ゆうやく)の原材料として知られています。また、彫像や石碑などのモニュメント、建材などにも幅広く使用されています。

織部灯ろう

楽庭では、主に2種類の石灯ろうを使用します。一つは織部灯ろうです。織部灯ろうは、わび茶を大成した千利休の弟子である茶人古田織部が考え出したものと伝わっている灯ろうです。他の灯ろうと比べて奇抜で特徴的な姿から、桃山時代後期から茶室灯ろうとして広く愛好されています。主に、蹲踞(つくばい)の鉢明りとして使用する、四角形の火袋を持つ活込み型の灯ろうです。その為、主に露地(茶庭)で使用されます。

雪見灯ろう

もう一つは雪見灯ろうです。雪見灯ろうは、もともと水辺に据えて水面に反射する灯を愛でて楽しんだことから、浮見灯ろうが変化して雪見灯ろうと呼ばれるといわれています。それ故、雪見灯ろうは基本的に海や川など水を意味する場所の近くに置きます。雪見灯ろうは、丸みを帯びた形であるため、重い石でありながら、繊細で優しいイメージを醸し出しています。日本庭園の自然美を表現するには欠かせない灯ろうとして、代表的な灯ろうです。

景石へのこだわり

日本庭園の景石山や滝などに見立てて設置されます。楽庭の使用する景石は、石肌の質感や色艶、そして表からみた形を十分に吟味されています。庭園技術おいては、石は大きく落ち着いて見えるように設置します。楽庭では、景石それぞれの特長が最大限発揮できるようにカットしてあります。よって、置くだけで、立派な景石が完全な状態でそびえ立つことができます。また、景石が2つ以上ある場合は、景石同士釣り合いが重要です。統一した色合いや、石質により、庭園全体が一体化する必要があります。景石は一つでの美しさよりも、全体でも調和が最も大切です。それ故、日本庭園は庭園全体でストーリーを奏でることができるのです。

砂利へのこだわり

日本庭園における砂利は、海や川などの水を意味します。さらに、波の荒さや、川の流れを抽象的に表現するため、砂利に箒で筋をつけます。これを砂紋と呼びます。楽庭では、砂紋を描いて楽しむことができるように、天然石砂利の粒径を約3mmに統一しています。砂利の種類は3種類用意しています。真白な白砂をイメージした白玉砂利。魔除けになり縁起のよい赤色をイメージした紅サンゴ砂利。金色がかった自然川や海の茶色をイメージした金華砂利。砂紋描きは、僧侶の修行の一環として行われるともいいます。砂紋は、穏やかな凪を表現したり、神秘的な輪の連続を表現したりと、持主の気持ちをそのまま表現できます。砂紋には、心を静め清めていく効果があると同時に、楽庭を見るだけでなく活用して楽しむことができます。

ストーリーへのこだわり

日本庭園は、すべての庭園に庭師が意図したストーリーがあります。その一角を表現している楽庭も、もちろん明確なストーリーを背景としてデザインされています。特に、出雲流庭園シリーズは、島根県出雲地方にしかない、独特の発展を遂げた歴史文化を背景としています。また、竹垣や、灯ろう、蹲踞などの一つ一つの庭園設備も古くから伝わる伝統を継承して作られています。楽庭は日本の歴史を背景として、日本人の文化を今に伝える意味の深い組立式日本庭園です。