日本庭園に欠かせない蹲踞(つくばい)

 日本庭園の象徴的な存在として蹲踞(つくばい)があります。蹲踞は水を溜めてある石であり、手を洗うことに使われますが、蹲踞という言葉は、体を丸くしてしゃがんだ状態の事を意味しています。つまり、しゃがんで姿勢を低くした状態で水を汲んで手を洗うために使う道具ということです。

 わざわざ姿勢を無理に低くしなくても手を洗えるように大きなサイズにした方が便利です。しかし、低くしたのには意味があります。

 それは、蹲踞は茶の湯の作法として利用される設備の一つだからです。茶の湯では、すべての客は平等であり、例え殿様であっても同等に扱われます。茶室に向かう途中に設置された蹲踞では、すべての人が背を低くして、頭を下げて、手と口を濯ぐことで身を清めます。そのためには、蹲踞は姿勢を低くして使うサイズになっている訳です。

 蹲踞は、侘び寂びの茶の湯を大成した、千利休が考案して設置したことから、茶庭には欠かせない設備となりました。その後、日本庭園の趣のある風情として必ず置かれるようになりました。