日本庭園は古くから日本で独特の発展を遂げた伝統文化の代表的存在です。日本庭園は、自然の風景を恣意的に造られた美しい景色を楽しむ憩いの場であり、鑑賞の場です。
日本庭園には、随所に縁起を担いだ場所が見られます。古の時代から日本人が縁起の良いものを身近に置いて、これからの暮らしから不安を取り除こうとした願いが込められています。
それでは、日本庭園がなぜ縁起が良いのかを見ていきましょう。
鶴は千年、亀は万年
鶴は千年、亀は万年とは、長寿でめでたいことを意味する日本での縁起の良い言葉です。
日本庭園には、鶴と亀をイメージした島を作って、庭園に長寿を意味し、長寿を願っています。多くは、鶴と亀をセットでつくり、鶴島、亀島と呼ばれます。
島といっても、池の中とは限らず、枯山水の場合は池に見立てた砂利の中に島がつくられます。
写真の金地院は右側に長い首を真っすぐ伸ばした鶴が飛んでいる姿を、左側に頭と足を出した亀の姿を現している島です。
舟で宝の島へ
中国の蓬莱島は、仙人が不老不死の薬を作る、金銀財宝でできた伝説の島として語り継がれています。
日本庭園には、その蓬莱島とそこに向かうための舟を意味する舟石をみることができます。
写真右側に浮かぶのは、蓮華寺の舟石です。反りあがった船首が帰路に向かっているので、蓬莱島で金銀寺宝を積んだ舟を意味し入舟と呼びます。逆に舟首が蓬莱島へ向かう場合は出舟と呼びます。
縁起の良い七五三
中国で縁起の良い数字とされ、子どもの長寿を祈って儀式をする文化が日本でも行われる七五三。
日本庭園においても、石を七五三に因んで配置されることが多いです。
島を3つ作って、それぞれ石を七つ、五つ、三つと配したり、五つと三つだけの組み合わせにしたりと、形は様々ですが、よく見るとたくさん七五三の配置を見つけることができます。
写真は東福寺の基礎石を再利用した石組ですが、こちらも七という縁起の良い数字となっています。
日本庭園には、このように縁起を担いだデザインが随所に見られます。それゆえ、日本庭園は縁起が良いと言われ人気があるのです。
日本庭園は単なる自然美をデザインしているだけでなく、深い意味があり意図をもってつくられています。作庭家は施主の願いや想いを実現できるような庭園デザインを、渾身を込めて作り上げているのです。
日本庭園に込められた意味を読み解き、作庭された時代背景を合わせることで、日本庭園の深さを知ることができます。